人は朝起きてから夜寝るまで、
9000回何かを選択している。
これは映画『フォルトゥナの瞳』の中に出てくる有名な台詞です。
そう、まさに試合中も選択の連続です。しかし、その選択肢自体の数を持ち合わせていなかったら良いプレーはできるでしょうか?
試合中に起きるミスは技術の問題だと思い、練習を繰り返しスキルを身に付けようとする子がほとんどです。実は試合中に起きるミスは知識がないことが原因の場合が多いのですが、そこで個人戦術を身に付けなければならないと感じる選手や保護者はいないのが現実です。
その知識の中で真っ先に必要なのがプレーの選択肢を増やすことです。試合中に自分がボールを持っているときだけではなく、ボールを持っていないときにも選択する機会は存在します。
フットサルは5対5で行う競技です。そうなるとピッチ上の9名の選手はボールを持っていない中で次のプレーの選択を求められます。少年サッカーの8人制では15名の選手がボールを持っていない状態となります。つまり、ボールがない状況で選択をしなければならない選手の方がピッチ上ではほとんどという訳です。
低学年が試合中に団子になったり、プレーになかなか関与できない選手が多いのにはこのような理由があり、選択肢を持ってプレーできていないから正しいポジショニングやプレーができていないのです。
例えば味方がドリブルをしているときに、その選手を追い越す動きをオーバーラップと言います。そもそもこのオーバーラップという戦術を知っていなければ選択肢すら出てきませんが、知っていたとしても正しい知識がないと有効に活用することはできません。味方がドリブルで仕掛けた方向と同じスペースにオーバーラップする場面をよく目にします。これではポジションが重なりますし、何より守備側からすると1人で2人を見られる状況になるため、守りやすくなってしまいます。だからこそトレーニングではこういう場面ではどんなプレーが効果的でその中からどの選択肢を選べばチームにとって良いのかを知る必要があるのです。
正しい知識と多くの選択肢を持つ選手は素早い判断ができるようになります。プレーが速い選手というのは動くスピードが速いということではなく、選択→決断→実行までのスピードが速いことを指します。
練習では様々な状況を想定してメニューを用意して、この状況ではどんなプレーを選択することが効果的なのかを考えさせています。もちろん練習では誤った選択をしてしまうことはありますが、これは悪いことではありません。ミスが生まれるとこういう状況では選んではいけないプレーなんだと学ぶことができます。
試合を上手く組み立てるマニュアルというものが存在しますが、常にマニュアル通りに行うことが正しい訳ではありません。しかし、日本人の思考としてはある程度マニュアルを覚えさせてその中からまずは選びましょうという指導をした方がスムーズなのも事実です。
当然ながら、正しい選択肢を持っても、ボールを扱う技術が未熟な場合はスキルミスが生まれることはありますが、我々指導者はそんなときに知識のミスなのか、技術のミスなのかを見極める必要があります。ミスを全て一括りにしまうと正しい改善ができないからです。
お子さんが試合でミスをしてしまったときにはそれは技術不足から起きたミスなのか、知識不足から起きたミスなのかを見るだけで、その後の成長に必要なトレーニングは変わるということなのです。